瞑想ワインとアナリスト

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書籍レビュー「英語の歴史から考える英文法の「なぜ」」

お疲れさまです。めそあなです

 

非常に残念ながら。本日で3連休も最後ですね。皆様はリフレッシュできたでしょうか?

めそあなは、この機を活かして「酒の旅」に出かけ、だいぶリフレッシュしてきました。旅の詳細は追ってご紹介予定です。

 

さて、今回はその旅のお供に読ませていただいた、「英語の歴史から考える英文法の「なぜ」」との本のレビューになります。

 

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ビジネス書コーナーに平積みしてあった。表紙の外観はほぼ教科書のそれ。

 

1.英文法の「なぜ」

「なぜ」購入したのか?

なぜかビジネス書コーナーにぽつりと平積みされていたのです。華やかなデザイン、横文字が踊る一角に、教科書らしい実直な表紙が異彩を放っていました。

 

余りの異質さに思わず手に取ってみると、次の見出しがありました(58頁)。

  • なぜ<3単現>だけ-(e)sをつけるのか?
  • なぜam/are/is/was/wereの原形はbeなのか?
  • 動詞go/went/goneのwentだけ形が違うのはなぜ?

 

衝撃でした。

何一つとして知りません。

 

そして、そのまま購入してしまいました。

 

 

「なぜ」題名が魅力的なのか?

人間の3大欲求は食欲・性欲・睡眠欲ですが、物の豊かな現代社会においては「知りたい」という知的欲求は最も大きい欲求の一つと言っても過言ではないと思います。

 

英語学習経験のある人なら誰でも知っている文法(ルール)。そこにシンプルな問いを投げかけられることで気づいたのです。自分がそのルールを、何も考えずにただ受け入れていたことに。

 

その事実をガツンと気づかせた上で、その回答を教えてくれるよ、と手を差し伸べているのですから、思わず手が伸びてしまった訳です。

 

 

「なぜ」に答える方法

 本書はこうした「なぜ」に答えるために、英語の「歴史」を紐解きます。

 

皆さんも、英単語を覚える際に「語源」に遡って覚えるように言われたことがあると思います。本書はこのアプローチを「文法」に適用し、それぞれの文法がどのように形成されてきたのかを教えてくれるのです。

 

そのため、本書では、現代英語から次のような時代の英語まで遡って文法を解説しています。

  1. 古英語:5世紀から11世紀頃
  2. 中英語:11世紀から15世紀頃
  3. 近代英語:15世紀から19世紀頃
  4. 現代英語:19世紀以降

 

難しそうです。

が、ご心配は無用です。本文の語り口はコラム調で読みやすく、例も豊富なため読みやすいです。

 

さて、先ほどの「なぜ」の答えについてですが、こちらは本書に譲ることにしましょう。ただ、英語という言語を貫く歴史上の大きな転換点については、少し本文からご紹介したいと思います。

 

 

2.「歴史」の重要性

英語は「なぜ」Englishというのか?

アングロ=サクソン人の侵入

英語の歴史は449年に始まりました。英国には、ケルト系のブリトン人が住んでいたのですが、449年にアングル人、サクソン人、ジュート人が侵入してきたのです。

 

そう、Englishとは「アングルの土地(Engla land)」から来ており、こうした人々が喋っていた言葉が(初期の)英語なのです。

 

現在でも、英国やドイツ、北欧の民族を「アングロ=サクソン」と言いますが、まさにこうした民族とその言語が同一のルーツを持っているのです。

 

したがって、もともとの英語(古英語)は、現在のドイツ語のように動詞の活用が非常に激しい(男性系、女性系、中性系✖️1、2、3人称✖️現在、過去、過去完了系など)言語だったのです。

 

それでは、現在の英語は「なぜ」シンプルなものになっているのか?それは「歴史」が語ってくれるのです。

 

 

異文化コミュニケーションは「なぜ」重要か?

デーン人の侵入

英語をシンプルなものにしたきっかけは、8世紀から11世紀に生じました。同じくアングロ=サクソン系民族のデーン人の侵入です。

 

いわゆるヴァイキングであるデーン人が英国を襲うようになり、定住生活に入っていたアングル人やサクソン人は、今度は逆に必死に抵抗することを強いられるようになります。

 

英国側は苦戦を強いられますが、878年、アルフレッド大王がデーン人と和議を結ぶことに成功します。デーン人は英国北部に住むことになり、南部の英国人と接触を保ちながら徐々に定着していくことになります。

 

このデーン人との接触が、英語の文法をシンプルなものにしていったのです。

 

日本語でも、ノンネイティブの人と話す際は、「左、行く、駅、ある」などと活用を減らして意思疎通を図ることがあると思います。こうした過程が、英語全体で起きたのです。

 

ノルマン・コンクエスト

もう一つ、大きな歴史上の出来事がありました。1066年のノルマン・コンクエストです。フランス北部のノルマン人が、英国を支配することになったのです。

 

その後、ノルマン人は英国を300年程度に亘り支配することになります。

 

ここでの問題は、ノルマン人はフランス語を話していた、ということです。支配者が別言語を話すということは、当然、被支配者の言語である英語にも、フランス語由来の単語が入ってくるということです。

 

こうして、アングロ=サクソン語の英語に、ラテン語ベースのフランス語の影響が入り込み、単語量が多言語の倍程度に膨らんだのです。 

 

日本でも近いことが生じています。日本の場合は支配されていたわけではないですが、近隣の大国である中国から漢字を輸入し、その他多くの文化を吸収しました。

 

どうでしょうか?歴史の流れが言語にも大きな影響を与えていることが感じられるのではないでしょうか?

 

 

3.英語の「学習」を振り返る

「なぜ」英語は暗記だったのか?

自分の英語学習の経験として、毎週毎週、新しい文法や単語暗記の連続で味気がなかったとの印象があります。

 

 他方で、本書を読み、「それはある程度仕方なかったのかな」と当時の自分の気持ちを納得できるようになりました。言語の文法は長大な歴史の中で生まれてきたものであり、たった一つの文法をとってもそれを紐解くには膨大な知識が必要なのです。

 

新たな言語を習得する過程の人間にとって、こうした細かな背景・歴史の説明は混乱を招きかねません。こうした認識からは、英語初学者の文法解説としては「まずは暗記!」のアプローチの方が効率的なのかとも思いました。

 

「なぜ」を教える側として

 他方で、英語を教える側の目線としては事態は異なってくると思います。

 

ルールをルールとして教えるのは簡単です。ただ、そうした「教え」なら誰でもできるます。より深い知識を修めながらも、教えられる側の知識レベルを認識したうえで、最適なレベルで「教え」を提供する。こうした「教え」があるべき姿なのだと思います。

 

残念ながらこうした「教え」は今までなかなか得難かったというのが私の感触です。自分のレベルも足りなかったし、英語文法をここまで知っている先生にも出会うことができず、表層的な理解にとどまっていたと思います。

 

本書はこうした思いに応えくれる、私の先生となってくれました。同時に、自分の専門分野ではこうしたアプローチがとれるようにせねば、と身の締まる思いです。

 

 

4,感想まとめ

良かった点

私が知りたかった英語の「なぜ」にここまで深く切り込んでくれた本は初めてでした。

 

興味を惹く題名、読みやすく理解しやすいコラム調の本文、多彩な例示など、学問的に深い内容を説明しながらも、読者を飽きさせない工夫が随所にみられたのは感服です。

 

もっと読んでいたい、と思わせてくれた本でした。

 

もう一歩の点

実直な表紙のキャッチー度が低いことや想定される読者層が曖昧なことでしょうか。

 

英語文法について相当な知識(現在完了、仮定法、使役動詞など)があることを前提に書かれていますので、「英語学習を一通り終え、より深く学びたいと思う人」を対象としているのだと思います。

 

具体的には、英語の先生や英文学の学生などだと思いますので、純粋な興味から表紙買いした筆者はかなり珍しい方だと思います。

 

それにしても、なぜビジネス書コーナーに置いてあったのか、本屋さんに意図を聞きたいです。。。

 

 

 

本日も長文にかかわらず、ご覧いただきありがとうございました。

また明日から、気分転換頑張っていきましょう(願望)!